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マシュマロ 8話

 「そうだ、僕だ!まぬけで愚かな馬鹿下僕!さあ、さっさと帰る!」
今田氏はあっけに取られて益田とその人形の様な人物を交互に見る。
 「君・・・君は誰だ・・・」
掠れた声で問うと、ふっと美しい笑みを見せて大きな瞳で真っ直ぐこちらを見据える。
 「は、はい、帰ります!」
益田は腰を抜かしながら常識外れに美しい人の後ろに廻り込んだ。
 「お、おい、龍子ちゃん」
 「残念ですがこれは僕のものなので、引き渡して頂きます。さあ、マスカマ!しっかり立て!」
襟首を掴み、無理矢理立たせる。益田はまだ、足がガクガクしている。
 「おい、しっかりしロッ!だらしがないぞ」
 「ちょっと待て、その子が君のものだって?それならノコノコとこんな場所来ないだろう」
 「そんなのはこの僕だって、この場所がどんなにいかがわしい場所だと知らなかったのだから、この馬鹿で愚かな下僕が知る訳無いだろう!」
それに、と言葉を繋ぐ。
 「これは、間違いなく僕のだ」
そう言うと益田を引き寄せ、唇を重ね合わせる。
 「ふあ?」
え、榎木津さんが僕に、口づけをしている?!
 「ん・・・」
榎木津の唇から漏らされた微かな声がーーー股間にクル。もっと深い口つけを。と思ったが乱暴に襟首を掴まれて外された。
今田氏の方に向かってにっこりと妖艶に微笑む。見る者を魅了する、性差の別を超えた美がそこにはあった。
 「さあ、こんないやらしい場所、さっさと出るぞ、マスカマ」
言うと、益田の足を蹴る。
 「は、はいい」
ぼんやりとしていた益田は慌てて榎木津の後を追った。


 「焦ったわよう、益田ちゃんがハッテン場に連れて行かれたからはらはらしたわ。私の顔が効く店だから良かったものの、公園とか淫乱旅館に連れてかれていたらどうなっていたかわかったものじゃないわ。---おしりは大丈夫?」
金ちゃんが店の前で待って居て、益田の肩を掴む。どうやら心配を掛けたらしい。
 「どうにか大丈夫ですーーーごめんなさい、僕が不用心でした。」
 「全くだ。この僕がわざわざ鬘まで被ってこの馬鹿を連れ戻さなければ今頃カマを掘られていたゾ、さあ、僕に感謝するがいい!」
榎木津に再度蹴られながら、益田は心底ぞっとする。この二人が居なければ今頃はとんでも事になっていたのだ。
 「本当に済みませんでした。---でも、榎木津さん、何でそんな格好したんですか?そのままでも入れたでしょうに」
馬鹿ッ!と頭を小突かれた。
 「金ちゃんが同性愛者かカマの振りをしろと言ったから、鬘を被っただけだ。化粧はしていないぞ、服もそのままだ」
 「はあ、済みません、僕の為に」
益田は改めて榎木津のその美しさに、感心する。鬘一つで男とも女ともつかない美貌を引き出せるのだ。
 「全くだ!帰るぞこのカマオロカロイヤルスペシャルデラックス肛門男!」
 「肛門男は酷いですよう」
泣き声を上げながら益田は榎木津の後を付いてゆく。
金ちゃんの店に戻って来ると、奥の座敷に通された。六畳くらいの部屋に様々な女物の小物が置いてある。二階へと続く階段が見えるので上に住んで、ここは休憩場にしているのだろう。小さな卓袱台が置いてある。
 「もう、終電もないわよ、あんた達泊まって行きなさいよ。押入れにお客用の布団が入っているわ。私は「桃」のママと朝まで飲んで来るから、あんた達はそこで仲良く寝なさいよ」
 「おい、金ちゃん、この肛門男と一緒に居ろと言うのか」
榎木津は不機嫌そうに益田を指さす。
 「そうよ、一晩一緒に過ごしなさい、じゃあね」
片目を瞑って手をひらひらさせて店を出て行ってしまった。
 「フン。」
畳の上に榎木津は寝転がる。益田は恐る恐る声を掛ける。
 「あの・・・」
 「何だ、カマ。カマ掘られていたほうが良かったか?あの何とかいう男にでも未練があると言うのか、それは何だ!いやらしい!」
わあっと益田は下半身を抑える。下着は剥ぎ取られて付けてないのでモロ解りだ。
 「これはあんたがあんなことをするからーーーそれに、僕のものってーーーそんな事いわれちゃあこうなっちまいますよお!」
 「ちがああう!僕のじゃない、僕の下僕と言ったんだッ」
益田はその場でぺたんと座り込む。俯いて、ポツリと漏らす。
 「そうーーーですよね、僕はただの下僕でーーーあんたに取って僕はどうでもいいんだ」
榎木津は勢い良く起き上がり、その太い眉を顰める。益田はまだ続ける。
 「昨日も・・・僕ばかりあんたを好きで、好きでどうしようもなくてーーー僕ばかり空回りして馬鹿みたいだ」
 「おい、又、ナキヤマになっているぞ、ヤメロ。」
 「口づけされて喜んでーーー本当に僕はどうしようもない男ですよ」
襟首を掴まれた。榎木津の顔が至近距離にある。
 「榎木津さん、僕は・・・」
 「五月蠅いぞ、黙れと言って居る」
引き寄せられ、唇が重なった。驚いて益田は目を見開く。長い睫毛が閉じられているのを見て、口づけをされて居るのだと気が付き、頭がくらくらする。唇を離すと榎木津は
 「こんな事ぐらい何時でも出来るぞ、このナキヤマ」
ふんっ、と踏ん反り返った。顔を少し赤くしている。可愛らしい反応に少し心が和んだがそれでも益田の心中は落ち着かない。
 「こんなことをして、僕をからかっているんですか?やだなあ、冗談きついですよ」
 「馬鹿ッ冗談でこんな事が出来るか!それともお前はさっきの男みたいにあんなことされて喜ぶタイプなのか?」
探偵閣下は激高している。
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益榎 | コメント(0) | 2018/08/19 12:04
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