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マシュマロ 12話

益田は目を閉じる。背中に榎木津の温もりを感じ乍ら
 「僕は幸せです」
そう、呟いた。


開口一番、鳥口守彦は
 「益田君、この物凄い美人誰?」
と聞かれた。寄り目がちな目が更に寄り目になって益田の顔を覗き込んだ。喫茶店の机から身を乗り出して聞いて来る。
 「そりゃあ、僕の女装は完璧だったけど、凄い美人では無いよ」
 「違う、違う、そりゃあ益田君の女装姿は爆笑ものだったけどーーーこれだよ、これ!」
現像に出していた写真の袋から一枚の写真を取り出した。
 「あっ!それは・・・」
 「誰なんだ、これ、雑誌に載せたらすごい反響が来るよ」
あの夜、つい出来心で榎木津が放心している時にそっと撮った写真だ。暗くてどうせ写らないだろうと高をくくっていたのだ。
悩ましい表情の長い髪をした麗人が写っていた。
 「えっ、と、それは二丁目でーーー偶々撮れたというか・・・」
 「もしかしてーーー大将?」
 「わああああッ」
 「うへえ、やっぱり!」
益田は店内に居る客がこちらを皆見る様な情けない声を出して慌てている。
 「こんな美人、大将以外、思いつかないよ」
写真をまじまじと見乍ら鳥口はうーんと唸った。
 「載せたら部数が上がるだろうなあ」
 「駄目です!そんな事したら僕達、あの破壊神に会社ごと潰されちゃうよ」
 「だろうね」
はあっと溜息を吐いて鳥口は椅子に凭れ掛かった。
 「鳥口君、この事はどうか内密に」
 「解ってるってーーああ、でも勿体ないなあ」
個人的に大将にモデルでも頼もうかなあ。などと呟いている。
鳥口から写真をひったくる様に奪って鞄の中に仕舞う。鳥口に礼を言って会計を済ませて早々と喫茶店を後にした。


 「ぷっくくくくっ」
和寅は益田の女装姿の写真を見て、笑い転げている。
 「何だね、益田君、君はやはり日頃からカマ呼ばわりされているからそういった素質があったのだね」
ぴらりと益田がお尻を触られている写真を取り出して、実に意地悪く笑って居る。益田は細い眉を顰めて苦々しい表情を浮かべて書類の整理をしている。
 「直ぐに依頼人が来られるので早くその写真返して下さいよ」
 「分かったよ、それ、依頼人に見せるのだろう?」
うくくと笑って、お勝手に引っ込んでしまった。
カウベルが鳴り、来客を告げる。今田夫人だ。
一通りの説明を益田は夫人に伝えると夫人は震えながら
 「主人がハッテン場に出入りしていたというのは本当ですか?」
益田は写真を取り出し
 「ええーーー残念ですが。それは僕が身を持って証明致します」
丁度、茶を持って来た和寅がぷっ、と噴き出した。益田は和寅を睨み付ける。
 「調査の為に身を削って下さったのですね、有難うございました。改めてお礼を申し上げます」
夫人はそう言って項垂れた。
益田が受け取りを辞退したにも関わらず破格の探偵料を置いて、今田夫人は事務所を去って行ってしまった。
 「ありゃ離婚だろうね、きっと」
和寅は下世話な話をしてくる。
 「それにしても、益田君、写真を依頼人に全て渡してしまって良かったのかね?記念に一枚持っていても良かったのじゃないかね、カマ記念に」
そう言って、いひひと笑う。
 「やめて下さいよッ、もううんざりですよ僕はこれから二丁目に行って金ちゃんと「桃」のママにお礼に行かないと行けないんですよ」
 「そうして帰って来なければいい!お前は金ちゃんの所で弟子入りをしてカマとして生活するのだ、うはははは。」
奥の部屋から昼寝をしていた探偵が起きてきて益田にそう言う。
 「酷いですよウ僕は今回身を呈してまで職務を遂行したんですからね」
 「フン、自分で自分の身くらい守らなければ意味ないじゃないか、無能だ、無能、この無能下僕めーーーんっ?」
榎木津は目を半眼にして益田の頭の上を見た。
不味い、あの写真の事がばれたかも?と身を竦めたが、暫く眺めると、ふいっと顔を逸らす。
あら、写真よりも、もっと艶めかしい行為が観えちゃいましたか。
 「フン、いやらしい。」
と呟いて
 「和寅、珈琲!」
大きな探偵の机に足を乗せて和寅に命令をする。ハイハイと和寅はお勝手に消える。
 「では、行ってきます」
 「帰って来なくても良いぞ、この助平」
 「榎木津さんは可愛いなあ、おじさんの癖に」
何か飛んでくる前に急いで事務所を飛び出した。


 「いらないわよ」
金ちゃんと「桃」のママは謝礼を受け取らなかった。
 「困ります、依頼人の方からは随分と頂いてますから、それにお世話になったのでこれくらいは!」
 「じゃあ、そのお金で又、飲みに来てよ」
ママが言う。
 「そういう趣味が無ければ入れないんじゃ?」
 「あら、龍子ちゃんなら良いわよ、一度カマになっているじゃない。それにこれから先は二丁目はもっと栄えるわよ。カマもゲイもおなべもノーマルも何でも来いの時代が来るわよ。何年かかるか分からないし世間の風あたりは強いでしょうけどね。」
 「うちのバーはカマ以外でも歓迎するわよ」
と金ちゃんが言った。
 「探偵ちゃんも連れてきて二人でハッテン場で楽しみなさいよぅ」
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益榎 | コメント(0) | 2018/08/23 11:55
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