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マシュマロ 13話

 「そ、そんな場所もうこりごりですよお」
金ちゃんは笑い乍ら
 「冗談よう、それより上手くいってるの?あんた達」
金ちゃんの店のカウンターで、飲み物を出して貰い、それを一口飲みながら益田は
 「うーん、どうでしょうかねえ、上手くいっている様ないってないような・・・」
曖昧な返事を返す。あの日から三日しか経っていない。探偵は益田と目を合わせると逸らす様な態度を取っている。
 「照れ屋なんでしょうよ、きっと。素直じゃないのね、益田ちゃんみたいに真面目に愛情を伝えると恥ずかしくなっちゃうのよ、そこの所分かってあげないとね」
金ちゃんがそう言うとママも
 「焦らず頑張りなさいよ」
と、答える。照れ屋だと中禅寺から聞いていた。それに子供の様な人だとは重々承知している。僕がもっとあの人を分かってあげないといけないのだ。---けれど僕はきっと青いのだろう。直ぐに探偵の顔色を窺い、落ち込んでしまう。
 「もっと自信を持ちなさいよ、あんたが他の男と宜しくやって居る時探偵ちゃんは凄く落ち着きがなかったわよ、ハッテン場に連れ込まれた時なんか慌てていたわ」
 「榎木津さんが?」
 「大変だったわよう、お店に殴り込みに行く気満々だったのを抑えるのに一苦労よ」
はあっと盛大に益田は溜息を吐いた。
 「なあに?辛気臭いわね、嬉しくないの?」
 「そりゃあ、嬉しいですよーーーけどもオカマ掘られそうになった所を助けられるのって恥ずかしくないですか?僕がうら若き女性なら兎も角、男ですよ、男。逆の立場なら榎木津さんを助けにーーーいや、あの人なら一人で大丈夫か・・・」
 「あんたは見捨てて逃げるんじゃないの?」
金ちゃんに意地悪く言われる。
 「う・・・いや、女性と子供なら助けますよーーー榎木津さんなら助ける前に相手をのしちゃっているでしょ?」
 「良いじゃないの、肉体的な強さで自分の価値を測ってんじゃないわよ、情けないわねーーー愛しちゃってんだからいいじゃない。あんたは誰よりも探偵ちゃんの事を愛しているんでしょ?」
ママがそう言うと益田は顔を赤くして、長い前髪を搔き上げた。
 「ええーー僕が誰よりもあの人の事を愛していますよ、それだけは自信があります」
 「それなら良いじゃないの、ぐちぐち言うんじゃないわよ、好きだ、愛してる、とうっとおしがられるくらい言っておやりなさい」
うっとおしがられるほどか。


結局、金ちゃんとママに飲まされて事務所に帰って来たのは十時頃だった。探偵は益田を見るなり
 「遅かったな、又オカマ芸でも披露してきたか、カマオロカスペシャル!」
益田は、只今帰りました。と挨拶をして鞄をソファーに置いた。榎木津はワインを片手に又、マシュマロを食べている。
 「二丁目が気に入ったんならあそこで働くといい、偶には飲みに行ってやるぞ、カマ」
益田はゆっくりと榎木津に近付いた。
後先など考えて居ない。自分の気持ちを素直に伝える事だ。
 「な、何だ、様子がおかしいぞ、お前」
益田は無言で探偵に近付く。何だか怖いと榎木津は思ったが直ぐにその考えを打ち消した。怖い筈なんてない!この僕が。
 「和寅さんは如何したのです?姿が見えないですが」
漸く口を聞いたかと思うとなんてない事を聞いて来る。
 「実家に行って居るぞホージとかヨージとかの手伝いをするとか言って居たなあーーまあ、明日には帰って来るだろう」
 「そう、それは良かったです」
何が良いのか聞こうとして、ぎょっとした。いつもへらへらとしている幇間男が真面目な顔をして目前に立っている。いつになく精悍な顔をしている。
榎木津は後退る。益田は榎木津が手に持っているグラスを取りあげ、机の上に置いた。
 「おい、何をするッマスヤマーーー」
 「榎木津さん、好きです」
そう言って、柔らかい笑みを見せる。
 「愛しています」
ーーー戸惑う。この若者が随分と大人に見える。
榎木津の手を取り、手の甲に恭しく口づける。
 「マスヤマーーー」
 「唇に触れても良いですか?」
戸惑いながらも頷いた。真剣な益田に対して何故か拒む事が出来ない。
身体を引き寄せられ、そのまま唇を重ねる。
 「ンッーーー」
ぞくっと身体に熱い感覚が走り抜ける。---甘いマシュマロの味がする。ーーー益田の口内から。こいつはマシュマロを食べて居ないのに何故かそんな味がする。---ああ、僕のが移ったのか。
 「ンっふっ―――ッ」
舌を絡ませ合いながら、榎木津は何も考えられなくなる。いや、こいつの事ばかりーーー。
 「ハア、榎木津さん」
唾液が混ざり合い、榎木津の顎を伝ってゆくのを益田の唇が追い、舌で舐め上げる。
 「ああ・・・マスヤマ」
身体が熱くなる。恥ずかしい程に身を震わせながら、益田の唇が喉元を滑ってゆくのを熱に浮かされた瞳で見つめる。唇が名残り惜しそうに離れ、榎木津の耳へと唇を押し当てて、耳を食む。
 「アッーーー」
柔らかな耳朶を唇で挟み、舌でちろちろと舐める。逃れようとする榎木津の身体をやんわりと包み込む様に抱く。
 「ハアーーー」
耳を舐め、首筋に添って唇を移動する。片腕で榎木津の身体を抱き、もう片方の手は榎木津の身体の線を辿る様に這わす。
 「ンッーーーマスヤマッ」
益田は榎木津の瞳を見つめて言った。
 「榎木津さんーーーお部屋に行っても良いですか?」
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益榎 | コメント(0) | 2018/08/24 11:28
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