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僕の可愛いおじさん 1話

僕はもう、死ぬのか?
見慣れた天井がぐるぐる回るのをぼんやりと眺めながら益田龍一はぼんやりと考えている。
 「ああ、榎木津さん」
こんな時でも益田は榎木津礼二郎の艶めかしい姿を思い出して、寝床で悶絶している。
先程、這うようにして事務所には電話をした。出たのは和寅で、具合が悪いので休みますと伝えた。和寅は
 「おやおや、馬鹿と何とかは風邪をひかないと言うけれど、あれは嘘だねえ」
と笑い乍ら電話を切られた。
益田は煎餅布団に包まり乍ら寝床に横たわっていた。昨日は特別寒かった上に張り込み中に雨に降られたのでびしょ濡れだった。張り込みも最終段階だったので、調査を済ませて依頼人にそのまま会って話をして、依頼自体は済んでいる。そのまま疲れていたので下宿に直帰し、寝間着に着替えて眠ってしまった。
それがいけなかったようだ。朝、起きると激しい頭痛と眩暈に襲われた。頭がぼうっとし、立ち上がるとそのままその場でしゃがみ込んでしまった。やばい。風邪だ。
手拭いを水に浸して額に当てている。それから少し眠ったが、どうにも熱でうなされる。
医者にかかろうにも病院まで歩けそうにない。
動けない・・・ああ、死ぬのかなあ。そんな事を考えていると無性に榎木津に会いたくなった。会って、抱き締めて。
あらら、下半身の一部だけ元気になった。
そういえば何かの本で読んだことがある。命の危機を感じると子孫を残そうとして性欲が高まるとかなんとか。
兎に角そんな事、事実かどうかも解らなかったが、益田は悶々と榎木津のあの時の仕草や艶めかしい姿を思い出しては熱に浮かされた頭で悶々と考え続けている。
せめて、姿だけでも拝みたい。すると、鮮明に榎木津の顔が浮かんできた。
 「うははははっ馬鹿は風邪ひかないと言うが、あれは嘘だな!この駄目下僕!こそこそとごみ箱と仲良く雨の中でデエトするからこうなるのだ!この馬鹿オロカめッ」
 「へ?」
幻覚が喋った・・・?やけに生々しいその幻覚は益田の額の上に氷嚢を乗せ、更に益田の頭を持ち上げて氷枕を乱暴に敷いた。
 「え、榎木津さんーーー何で?」
 「そうだ、僕だ、お前が拝め奉る榎木津礼二郎だ!和寅が用事があると言うのでわざわざ来てやったのだ!いや、暇だったから来てやったのだ、下僕が風邪ひいてひいひい言っている姿を楽しく、いや、憐れんで見てやろうと思ってわざわざ来てやったのだ、どうだ、嬉しかろう!」
どうやら本物らしい。益田は驚いて目を見開いた。起き上がろうにも動けなかった。
 「は、はは・・・。そりゃ有り難いです・・・・」
わざわざ来てもらって嬉しいが、まともに会話も出来ない。益田は口をパクパクさせた。声が出ない。
 「何だ、水か、水が欲しいのか?」
榎木津は立ち上がり卓袱台の上の湯飲みを水場に持っていき、水道の水を湯呑に入れて水を零しながら持って来た。
 「ほれ、しっかり飲め!」
益田を起こすと湯呑を口に押し当てる。
 「むぐぐ」
益田は飲みきれず、零した。
 「仕方がないなあ」
そう言うと榎木津は湯呑をあおって水を口に含むと益田に口づけた。
 「ん?んん?」
 
 
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益榎 | コメント(0) | 2018/10/13 14:46
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