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僕の可愛いおじさん 3話

この探偵はやれ、女学生だの芸妓だの言って周りに女性を侍らせては居るが、その割に情婦が居たためしがない。更に下品な下ネタなどは酷く嫌う。
 「エヅは根が真面目だからさあ」
などと司喜久男は言うが。
 「おい、体温計」
 「あ、はい36度9分・・・・大分良くなりましたよ、お陰様で。」
 「薬が効いたみたいだな、おい、薬のお陰で熱が下がっているだけだからな、もう少し寝て居なさい。」
 「榎木津さん」
 「何だ?」
 「今日は何だか優しいですねぇ」
 「フン、別に優しくはナイ、暇なだけだ。どうせ暇なら風邪でのたうちまわっている馬鹿な下僕の姿を見てやろうと思っただけだ」
ふふふ、と笑って益田は再び横になった。氷枕がちゃぽんと音を立てた。はて、うちにこんなものがあったのかと不思議に思い
 「これ、どうしたんですか?わざわざ持って来たんですか、榎木津さんが?」
榎木津は煙草を吸おうとして灰皿がない事に気が付いて煙草の箱に煙草を戻していた所だった。
 「んー?それはここの大家さんの所から借りて来た。まったく、ここには灰皿も何も無いから仕方が無く借りてきたのだ!この僕がわざわざ下僕の家に来るのだから前もって用意しておくように!わかったか、このカマ下僕!」
 「そりゃあ、あんたが来てくださるのなら灰皿くらいは買って来ますけどもーーー又、来て下さるのですか?そりゃあ嬉しいなあ」
フン、と鼻を鳴らし榎木津は横を向く。
 「別に、又来るとは言って無いぞ!ただ、お前が来て欲しいと僕にひれ伏しお願いするのなら別だが」
 「そりゃあ、ひれ伏して来てくださるのならいくらでもしますがね、あんた気まぐれだから来てくださるか分からないですし」
それには答えず、榎木津が立ち上がり玄関の扉の前に立つ。
 「あの、どこに行くんです?」
 「煙草を吸いに行ってくる」
実に簡略にそう言うとそのまま表へと出て行ってしまった。扉がしまる音を聞きながら益田は
 「気に障る様な事を言ってしまったかなあ」
と溜息を吐きながら独り言を呟いた。長い前髪を掻き上げ、このまま帰ってしまうかも知れないなあと項垂れた。


果たしてーーー。
帰って来た。
 「な、何ですか、その恰好ッ」
榎木津はお盆を両手で抱えて戻って来た。お盆の上には小鍋と茶碗が載っている。
 「ほら、食べなさい」
お盆ごと差し出されて益田は戸惑うーーー何で。
 「何でエプロンつけているんですよお」
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益榎 | コメント(0) | 2018/10/16 14:02
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