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マシュマロ 7話

 「手だしちゃ駄目よ、純情な子なんだから」
ママが水割りを持って来乍ら言う。
 「解ってるって」
そう言いながら益田の太腿を揉む。---たっ助けてぇ
ちらりと榎木津の方を見ると、腕を組んでそっぽを向いている。まだ腹を抱え爆笑されて方がましだ。無関心の方が傷つく。
何だか益田は無性に腹が立って来た。ヤケクソになって酒の入ったグラスをあおる。飲まなければやって居られないのだ。
 「いやー良い飲みっぷりだねえ、どう、お店上がったらもう一軒付き合ってよ」
しこたま飲んだ益田はぼんやりとしている。
 「一杯だけっすよ」
酔い乍らも仕事の事を考える。一緒に街中を歩いている方が決定的な証拠となるだろう。益田自身が身を持って男と浮気をしているという証拠になるのでこれで調査は完璧だ。探偵は兎も角金ちゃんにライカを渡してあるので写真は撮ってくれるに違いない。
ーーーそれにしてもこのおっさん、いやらしい。
 「肌が綺麗だね、すべすべだよ」
スカートの中に手を突っ込んできて太腿を弄って来る。「きゃあ」と思わず変な声が出た。
 「ちょっーー止めて下さい、冗談きついですよぅ」
やんわりと益田は手を押し返す。ぞわっと寒気がする。気持ちが悪いッ!
 「仕方が無いじゃない、龍子ちゃんが可愛いんだからさあ」
 「龍子ちゃん」
ママが益田の傍に来て耳打ちをする。
 「上がって良いわよ写真が撮れたそうだから」
ほっとしたのも束の間
 「何、龍子ちゃん上がるの?じゃあ待っているからね」
鼻の下を伸ばしながら今田氏は手をひらひらさせている。
 「最後にあのおっさんと連れ立って歩く所を写真に収めて下さいと伝えて下さい」
とこっそりママに告げると裏口から店を出る。既に今田氏は裏口で待って居た。


 「危ないわねえ、大丈夫かしら」
ママは腕を組んでカウンター越しに金ちゃんと探偵に声を掛ける。もう、客はこの二人しか居ない。店の従業員も帰り志度をしている。
 「あの馬鹿オロカ、オロカすぎて何も言えなくなるな!」
 「行くわよ、探偵ちゃん」
二人同時に立ち上がって店を出る。慌ただしく去って行った珍客にママは笑って見送る。
 「頑張りなさいよ、龍子ちゃん」
誰に言うでもなく、そう呟いた。


 「あのう、どこへ行くんです?」
馴れ馴れしく腰に手を廻して益田を連れ歩いている今田氏は薄暗い路地裏の建物の前で立ち止まった。黒い洋館のような外観だ。二階建てのちょっとした金持ちが住んでそうな雰囲気の建物だ。
今田氏は扉の取っ手を掴み、開いた。中は薄暗い。
中にはソファー一組に付き、カーテンで仕切られているという、珍妙なソファーが並んでいる。
どう見ても怪しさが滲み出ている。やばい!
益田は反射的に逃げようとすると案内された席に今田氏は益田を押し込める。
 「うわッ何するんですかあー!」
ソファーに益田を押し倒して伸し掛かる。
 「何って、ここは有料ハッテン場だよーーー淫乱旅館や公園とか事務所の方が良かった?」
刑事時代に聞いた事がある。淫乱旅館は男同士の連れ込み旅館みたいな所で、公園も男同士の性交の場所として有名な、ここらでは新宿公園などが有名だ。事務所とは公衆便所を意味する。いずれも性交を目的とした場所だ。
最近は警察もそういった連中を取り締まるようにはなっていたが、まだまだ無法地帯になっているのだ。
 「わああ、ちょっと、ちょっとまって!」
暴れる益田を抑え込み、スカートの中に手を突っ込まれる。益田は嫌悪感で背中を震わせる。暴力は好まないが仕方が無い。思いっきり蹴りを入れようとしたが抑え込まれた。
 「ふふふ、私は武道を嗜んでいるんだよ、さあ、大人しくしようね」
 「むぐぐっ」
口を塞がれて両足で身体の動きを封じられた。
 「んっ・・・・!」
女物の下着を降ろされて脱がされる。やばい!犯されるう!
ベルトを外して今田氏はズボンのチャックを降ろす。
 「た、助けてーーー!」
口を塞ぐ掌が離されて益田は堪らず声を上げる。
 「榎木津さ・・・!」
 「何だ、呼んだか、この犯され駄目カマ下僕」
声が聞こえた途端、今田氏は後ろに仰け反った。白い手が今田氏を突き飛ばしているのが見えた。
今田氏が驚いて声を荒げた。
 「な、何だお前は・・・・」
だがその声は目の前に立っている天使に驚いて途中で掻き消されてしまった。
そこだけ光が差したかのような錯覚に囚われる。長い金髪の男とも女ともつかぬ者が立っていた。美しい鼻梁。長い睫毛に縁どられた大きな瞳は光の加減で琥珀色に見える。
 「さあ、そんなところでカマ掘られる前に早く僕と、ここを出る!いいね!分かったかこの馬鹿!」
こんな言動と容姿がそぐわない人物は一人しかいない。
 「え、榎木津さん・・・?」
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益榎 | コメント(0) | 2018/08/18 12:12
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